屋内外のイベント、サイネージ、コンサート会場、展示会など、さまざまな空間でLEDビジョンが使用される機会が増えています。しかし導入が増えるほど、落下事故や設置トラブルに関する相談も増加しています。特に大型LEDビジョンは一枚あたり20~40kg前後の重量があるため、落下すれば重大な事故につながりかねません。
そのためLEDビジョンの設置では、単に「吊るす」「固定する」だけでは不十分で、構造計算を踏まえた落下防止構造が不可欠です。
本記事では、LEDビジョンの落下防止に必要なワイヤー、ボルト、金具、フレームなどの具体的な選び方から、施工現場で頻出する失敗例と注意点まで、専門的な観点から詳しく解説します。

■ そもそも LEDビジョンの落下事故はなぜ起きるのか?
LEDビジョンはパネル単体では軽く見えますが、実際は以下のような要素が積み重なり、構造上の負荷が大きくなります。
- パネルの自重(1枚 5~15kg)
- 連結フレームやバーの重量
- ケーブルや電源ボックスの重量
- 屋外の場合は風荷重(突風時は数百kg相当になることも)
- ライブ会場などでの振動・揺れ
落下事故の多くは、
- 金具の選定ミス
- 施工時の締付不足
- フレームの強度不足
- 安全ワイヤー未使用
といった「人的設計ミス」によるものです。
特に最近は、イベント業者が急ぎで組み立てるケースが増え、作業時間が短縮されるほど落下リスクが高まる傾向があります。
■ LEDビジョンの落下防止構造で必須となる要素
落下防止構造は、一般的に次の3つの柱で構成されます。
① 主荷重を支える施工(主構造)
- 吊り金具(ハンギングバー)
- ボルト(ハイテンションボルトなど)
- フレーム構造
- アンカーポイント
これはLEDビジョンを「通常使用で支える」ための構造。
② 二重安全のための落下防止(副構造)
- 安全ワイヤー
- セーフティチェーン
- ステンレスシャックル
主構造が破損した場合でも落下を避ける役割を持ちます。
③ 設置環境の負荷を考慮した補助構造
- 耐風仕様(屋外)
- 耐震仕様(天井施工)
- フレーム補強
- 壁面アンカー強化
LEDビジョンの利用シーンに応じて必要となります。
■ ワイヤーの選び方(安全ワイヤーが最重要)
安全ワイヤーは、LEDビジョン落下防止の「最後の砦」と言えます。
● ワイヤーの太さ・強度
一般的には
- φ4mm … 小型LED(1枚5kg程度)
- φ6mm … 中型(10~20kg)
- φ8mm以上 … 大型(30kg以上)
が目安です。
特にイベント用の吊り下げ型LEDビジョンは吊荷重量が大きく、吊荷の5〜10倍の破断強度を持つワイヤーを使用するのが安全とされています。
● 材質:ステンレスワイヤーが基本
屋外は必ずステンレスSUS304またはSUS316を使用。屋内でも、長期設置ではサビ防止の意味でステンレス推奨。
● ワイヤークリップの個数
ワイヤークリップは「Uボルト側が“余り側”」が基本。
個数は下記が一般的です。
- ~6mm:2個
- 6~10mm:3個
- 10mm以上:4個
この“個数不足”が落下原因としてよくあります。
■ ボルトの選び方|落下事故の7割はボルトが原因
LEDビジョン設備で使用するボルトは「見た目が似ていても強度が全く違う」ため注意が必要です。
● ハイテンションボルト(強度区分10.9以上)が推奨
特に吊り構造では
- 強度区分8.8以上
- 10.9の使用が最も安全
が一般的です。
DIYで使われる柔らかいボルト(強度4.8など)は、LEDビジョンには不向き。
● 締付トルクも重要
施工時の締付が不十分だと、振動で緩んで落下につながります。
施工現場では必ず「トルクレンチ」を使用し、
メーカー指定のトルク値で締付することが原則です。
● スプリングワッシャーやダブルナットも効果的
振動が多いライブ会場では、
- スプリングワッシャー
- ダブルナット
- ネジロック剤(中強度)
などを併用することが多いです。
■ 金具の選び方|安全を左右する「構造設計」のポイント
LEDビジョンは、メーカーごとに専用ハンギングバーや連結金具が用意されていますが、
イベント現場では他社フレームに組み込むケースも多く、金具選定ミスが起きやすい部分です。
● 重要なのは「荷重の流れをどう受けるか」
金具を選ぶときは、
- 荷重がどこに集まるか
- ボルトがせん断力を受けるか引張力を受けるか
- フレームへの力が均等か
を考える必要があります。
特に「片側だけで支える構造」になっていると、支点に過大な荷重が集中して破断の原因になります。
● 耐荷重表を必ず確認する
金具メーカーのカタログには、
- 引張強度
- せん断強度
- 使用荷重
が記載されています。
LEDビジョンの場合、静荷重(自重)に加えて動的荷重を30%程度上乗せして考えるのが一般的です。
■ フレーム(架台)の設計ポイント
LEDビジョンは、パネル同士を連結するだけでは自立しないため、必ずフレーム(架台)が必要です。
● 屋内:軽量アルミフレームで十分なことが多い
展示会やイベントでは、
- アルミトラス
- アルミ押出材フレーム
- 自立スタンド型フレーム
などが使われます。
● 屋外:耐風荷重を最優先
屋外設置では、風荷重が最も危険です。
特に
- 台風時の突風
- 風速20m/s以上の強風
ではLEDビジョンが“帆”のように受風してしまい、数百kgの力で倒れようとすることがあります。
風荷重を正しく計算するために、屋外では
- 鋼製フレーム
- ベースウェイト(コンクリート)
- アンカー固定
が必須になります。
■ 落下防止構造の具体的な構成例
【例1】 天吊りLEDビジョン(屋内イベント)
- ハンギングバー
- 10.9ボルト
- トラス金具
- 安全ワイヤー(φ6mm 2本)
- ケーブルの荷重分散クリップ
【例2】 屋外ステージLEDビジョン
- 鋼製メインフレーム
- 風荷重対策版(背面パネル)
- アンカー固定
- 安全ワイヤー(φ8mm)
- ステンレスシャックル
- 防錆処理
■ よくある施工ミスと事故例
● ミス①:安全ワイヤーが細すぎる
→ 風荷重がかかると破断し、落下につながる。
● ミス②:ボルトの締付不足
→ 振動で緩み、連結部が外れる。
● ミス③:金具の向きが逆
→ 荷重が想定と異なる方向にかかり破損する。
● ミス④:ケーブルが引っ張って落下
→ パネルではなくケーブルが荷重を受けてしまい、コネクタ破損・落下を招く。
● ミス⑤:フレームが弱い
→ LEDパネルは無事でもフレームが変形し倒壊することがある。
■ LEDビジョンの落下防止に必要なチェックリスト
以下の項目を満たしていれば、落下リスクは大幅に下がります。
【構造チェック】
- 10.9ボルトまたは8.8以上のボルトを使用しているか
- フレーム強度に余裕があるか
- トルク管理が行われたか
【ワイヤーチェック】
- ワイヤーの太さが適切か
- クリップ個数は基準通りか
- ステンレス製か(屋外)
- シャックルのピン抜け防止がされているか
【設置環境チェック】
- 屋外の場合は風荷重計算を行ったか
- 屋内でも天井材の強度を確認したか
- ケーブルの荷重がパネルにかからないよう処理したか
■ まとめ:LEDビジョンの落下防止構造は「二重三重の安全対策」が基本
LEDビジョンは便利で迫力ある映像を届けられる一方、重量があるため、設置ミスが事故に直結する機材です。
安全に運用するためには、
- 正しいワイヤー選定
- 強度区分の高いボルト使用
- 金具の向き・配置
- 風荷重や振動の考慮
といった専門的な判断が欠かせません。
特に安全ワイヤーの有無は、落下防止における最大のポイントです。
本記事が、LEDビジョン設置に携わる技術者やイベント業者の方々にとって、少しでも参考になれば幸いです。
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